1か月休んで15万2,145円。労災で出る額と、健康保険で受診したときの差

1か月休んで、15万2,145円。 これは労災の休業補償で出る額です。労災を使わず健康保険で受診して終われば、この15万円は出ません。
1か月休んで、15万2,145円。
これは労災の休業補償で出る額です。労災を使わず健康保険で受診して終われば、この15万円は出ません。
まず、金額の話から
時給1,350円、1日8時間、月20日の人が、作業中に足をはさんで1か月休んだとします。
労災の休業補償は「給付基礎日額」をもとに計算します。直前3か月の賃金の合計を、その3か月の暦の日数で割った額です。8月22日に書いた平均賃金と同じ形の割り算で、1円未満を切り上げる、という点だけが違います。
1,350円 × 8時間 × 20日 = 216,000円(1か月)
216,000円 × 3か月 = 648,000円
648,000円 ÷ 92日(5月・6月・7月の暦の日数)= 7,043.4…円
切り上げて、給付基礎日額は 7,044円。
休業(補償)給付は、この60%。
7,044円 × 0.6 = 4,226円
これに休業特別支給金が20%乗ります。
7,044円 × 0.2 = 1,409円
合わせて1日あたり 5,635円。
出るのは休業4日目からなので、30日休んだら27日分です。
5,635円 × 27日 = 152,145円
最初の3日(待期期間)は労災保険からは出ません。ただし仕事中のケガであれば、この3日分は会社が平均賃金の6割を払う決まりになっています。
4,226円 × 3日 = 12,678円
(通勤途中のケガの場合、この3日分を会社が払う義務はありません)
時給の数字を自分のものに入れ替えれば、そのまま計算できます。時給1,600円なら給付基礎日額は8,348円、1日あたり約6,678円、27日でおよそ18万円です。
治療費のほうは、もっと単純です
労災の療養(補償)給付は、治療費が全額。窓口の負担は0円です。
健康保険で受診すると3割。骨折の手術と通院で総額30万円かかったとすると、9万円が自分の財布から出ていきます。
15万2,145円 + 9万円 = 24万2千円ほど。
保険証を出すよう言われて、その通りにしただけで、この差が生まれます。
病院の窓口で出す紙が違う
労災指定病院であれば、療養(補償)給付の請求書を窓口に出せば、その場での支払いは0円です。指定外の病院にかかったときは、いったん全額を立て替えて、あとから請求して返してもらう形になります。救急でどこに運ばれるかは選べませんから、後者になることもあります。どちらであっても、労災であることに変わりはありません。
健康保険で受診してしまったあとでも
後から労災に切り替える手続きがあります。健康保険が負担した分を一度返して、労災として請求し直す形です。加入している健康保険(協会けんぽや健保組合)と、労働基準監督署に連絡する流れになります。手間はかかりますが、道が閉じているわけではありません。
通勤の途中も、労災です
労災には「業務災害」と「通勤災害」の二つがあります。
家から工場へ、工場から家へ。ふだん使っている経路と方法での移動であれば、その途中のケガも対象です。自転車で転んだ、雨の朝に階段で滑った、交差点で車に当てられた。どれも通勤災害の範囲に入ります。
この辺りは車と自転車とバイクの通勤がほとんどで、2交替なら家を出る時間が週替わりで変わります。暗いうちに出る週と、朝の渋滞に入る週。通勤中のことは労災ではない、と思い込んでいる人が多いところですが、対象です。
寄り道をすると原則そこから先は外れますが、日常生活に必要な行為(夕飯の買い物、病院に寄る、子どもを保育園に迎えに行くなど)であれば、元の経路に戻ったあとはまた対象になる決まりです。
国籍も、雇用形態も関係ありません
労災保険は、そこで雇われて働く人なら、全員に適用されます。
正社員でも、派遣でも、パートでも、アルバイトでも、期間工でも。日本人でも、外国籍でも。在留資格の種類も問いません。試用期間中も、入社した初日も同じです。
労働者を1人でも雇っていれば、会社は労災保険に入る義務があります。仮に会社が手続きをしていなかったとしても、働いていた人への給付は行われる仕組みです(未加入だった会社は、あとから保険料と費用を徴収されます)。
派遣で働いている場合、労災保険の関係は派遣元にあります(雇用契約の相手が派遣元だという話は8月23日に書きました)。請求書は派遣元を管轄する労働基準監督署に出します。ケガをした現場は派遣先ですから、書類には派遣先の証明欄もあります。つまり両方に話が伝わる。ここで気まずさが先に立って、黙ってしまう人がいます。
外国籍の同僚に伝えるとき
決まりは同じでも、書類の言葉と病院でのやり取りでつまずくことがあります。
とよた国際交流協会では、多言語での生活相談を受け付けています。労災のことに限らず、先に窓口を知っておくと、いざというときに動けます。
病院での通訳については、あいち医療通訳システムという仕組みがあります。ただし、これは本人から頼めるものではありません。協定を結んだ医療機関の側から依頼する仕組みで、費用も医療機関が負担します。だから正しい使い方は、かかる前に「その病院が協定を結んでいる医療機関かどうか」を確かめておくことです。ケガをしてから探しはじめると間に合いません。
療養中と、その後30日は解雇できない
労働基準法に、仕事上のケガや病気の療養のために休んでいる期間と、その後30日間は解雇してはいけない、という決まりがあります。
3か月療養したなら、その3か月と、復帰してから30日。この間は会社の側から切れません。
休んだら次の更新がないのではないか、と考えて申請をためらう人がいますが、法律の建て付けはその逆を向いています(療養が長く続いたときの例外は定められています)。
なお、この解雇制限は仕事上のケガや病気についての決まりで、通勤災害には及びません。通勤災害も労災であることに変わりはありませんが、ここだけは扱いが違います。
会社が書類に判を押してくれないとき
労災の請求書には事業主の証明欄があります。ただ、そこが空欄でも、労働基準監督署は請求書を受け付ける取り扱いになっています。証明を受けられなかった事情を書いた紙を添えて出す形です。
労災かどうかを決めるのは会社ではなく、労働基準監督署です。
期限は2年
療養と休業についての請求は、2年で時効になります。
去年のケガでも、まだ間に合うことがあります。
休憩室でこの話になると
たいてい一人か二人、思い当たる顔になります。腰をやったとき自分で病院に行った、指を切ったけれど翌日出勤したので何も言わなかった。そういう類の話です。何年も前のこととして出てくることもあります。
十年やっている人ほど、そういう話を持っています。ケガをしたらまず誰に言うのか、という当たり前のことも、教わる機会はあまりありません。
必要になるのは、いつ、どこで、どういう作業をしていて、そのとき近くに誰がいたか。この4つです。手帳でもスマホのメモでも、写真1枚でも足りることがあります。
話を聞いてくれるところ
- 豊田労働基準監督署 0565-35-2323(平日8:30-17:15)
労災の請求書を出す先も、判断するのもここです。
- とよた国際交流協会
多言語での生活相談。日本語以外で話したいときの入口になります。
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省・無料)0120-811-610
平日17:00-22:00、土日祝9:00-21:00。仕事が終わってからかけられる時間帯です。ポルトガル語は0120-531-403、中国語は0120-531-402と、言語ごとに番号が分かれています。
労災の手続きをもう少し細かく書いた記事はこちらです。
有限会社ブリッジスタッフサービス(豊田市・1978年創業)/0565-34-0707 平日10:00〜17:00、LINEは24時間受付です。
言わずに済ませたことを思い出した人は、書かなくてもかまいません。
あなたの現場では、ケガをしたとき最初に誰に言うことになっていますか。班長ですか、事務所ですか、それとも派遣元ですか。
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