この記事の要点
- 有給を出すのは派遣先の工場ではなく、雇用契約を結んでいる派遣元
- 勤続6か月・全労働日の8割以上の出勤で10日。6年6か月以上で20日
- 会社には年5日を取らせる義務がある。違反には30万円以下の罰金
「派遣だから有給はない」と言われたことがあるかもしれません。それは誤りです。年次有給休暇は労働基準法第39条で決まっていて、雇い方で区別されません。派遣でもパートでも、条件を満たせば発生します。
派遣の場合、有給を出すのは派遣元です。つまり雇用契約を結んでいる派遣会社であって、働きに行っている工場ではありません。ここを取り違えると、申請先を間違えます。
この記事では、日数の数え方、時給で働く人の1日分の金額、断られたときの動き方を書きます。
有給を出すのは派遣先ではなく派遣元です
労働者派遣法第44条は、派遣で働く人について、労働基準法の一部を派遣先に適用すると定めています。労働時間、休憩、休日などがそれにあたります。
年次有給休暇の第39条は、この一覧に入っていません。だから原則どおり、雇用主である派遣元が付与の義務を負います。
申請は派遣元に出します。現場のシフト調整は必要ですが、それは派遣元と派遣先の間で行うことです。
条件は2つ、日数は勤続年数で決まります
発生する条件
- 1雇い入れの日から6か月間、継続して勤務している
- 2その6か月の全労働日のうち、8割以上出勤している
両方を満たすと10日が付きます。その後は1年ごとに、勤続年数に応じた日数が付きます。
出勤率の計算では、休んでも「出勤した」と扱う日があります。業務上のけがや病気で休んだ日、産前産後の休業、育児休業・介護休業、有給を取った日です。
勤続年数ごとの日数
週5日、または週の所定労働時間が30時間以上の人の日数です。
| 勤続 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
2交替や3交替のフルタイム勤務なら、この表を見てください。夜勤があっても日数は変わりません。
週4日以下で働く人の日数
週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下の人は、日数が減ります。これを比例付与といいます。週以外の期間で日数が決まっている人は、年間の所定労働日数が216日以下であれば同じ扱いです。
| 週の日数 | 年間の日数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
派遣先が変わっても、日数は引き継がれます
同じ派遣会社との雇用契約が続いているなら、働きに行く工場が変わっても勤続年数はリセットされません。残っている日数もそのままです。
一方、派遣会社そのものを変えた場合は、新しい会社での勤続を最初から数え直します。また6か月を待つことになります。
契約が更新の間で少し空いた場合の扱いは、空白の長さや実態で判断が分かれます。個別の判断は労働基準監督署に確認してください。
派遣先が変わるときや契約を更新するときは、残日数を書いた書面をもらっておくと、あとで揉めません。
時給で働く人の、有給1日分の金額
有給を取った日の賃金は、次の3つのどれかで払われます。どれを使うかは、就業規則などであらかじめ決めておくことになっています。
- 1所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 2平均賃金
- 3健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する額(労使協定が必要)
時給の人で1の方法なら、計算はこうなります。
時給 × その日の所定労働時間
時給1,600円で1日8時間の勤務なら、1,600円 × 8時間 = 12,800円です。
2の平均賃金は、直前3か月の賃金総額を、その期間の総日数で割って出します。時給や日給の人には最低保障があります。同じ3か月の賃金総額を、実際に働いた日数で割り、その60%を下回らない額です。高いほうがその人の平均賃金になります。
会社には、年5日を取らせる義務があります
年10日以上の有給が付く人については、使用者は基準日から1年以内に5日を取らせなければなりません。自分で申請して取った日数や、計画的付与で取った日数も、この5日に数えます。
5日に足りないときは、会社が時季を指定して取らせる必要があります。指定の前に、本人の意見を聞くことになっています。違反した場合は30万円以下の罰金が定められています。
会社は年次有給休暇管理簿を作り、3年間保存することにもなっています。求めれば、自分の残日数と取得日はわかります。
労使協定があれば、5日を上限に、1時間単位で有給を取れる仕組みも作れます。通院や役所の手続きに使えます。制度があるかどうかは派遣元に確認してください。
断られたときの対処
会社が有給の日をずらせるのは、時季変更権を使うときだけです。これは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。単に忙しい、人が足りない、という理由だけでは足りません。
時季変更権は「別の日にずらす」権利です。取得そのものを断る権利ではありません。取る理由を会社に言う必要もありません。使い道は自由です。
手順は次のとおりです。
- 1申請は口頭ではなく、書面かメールなど記録が残る形で出す
- 2断られたら、その理由も記録が残る形で聞く
- 3就業規則の有給の条文と、有給の日の賃金の計算方法を見せてもらう
- 4年次有給休暇管理簿など、残日数がわかる書類を求める
- 5解決しなければ労働基準監督署に相談する
有給を取った労働者に賃金の減額その他の不利益な取扱いをしないように、と労働基準法附則第136条が定めています。ただしこれは努力義務で、罰則はありません。精皆勤手当の扱いなどは、裁判で事案ごとに判断されています。減額された場合は、金額と根拠を確認したうえで相談してください。
使わないと2年で消えます
年次有給休暇の権利は、発生した日から2年で時効になります。繰り越しても、2年を過ぎた分は消えます。就業規則で繰り越しを禁じても、権利そのものは消えません。
退職するときも、残っている有給は取れます。ただし退職日より後の分は取れません。退職を決めたら、早めに日程を相談してください。
よくある質問
契約が3か月ごとの更新です。6か月に届きますか。
同じ派遣会社との雇用契約が更新されて続いていれば、通算して6か月を数えます。3か月契約を1回更新した時点で6か月です。契約書が分かれていても、実態として勤務が続いていれば継続勤務として扱われます。
派遣先の工場から「派遣に有給はない」と言われました。
有給を出すのは派遣元です。派遣先の担当者が制度を把握していないことはあります。派遣元の担当者に直接申請してください。それでも取らせてもらえない場合は、労働基準監督署に相談してください。
欠勤が多く、8割に届きませんでした。もう取れませんか。
その期間については、法律上の付与義務は生じません。ただし次の1年で8割以上出勤すれば、その年の分は発生します。過去に発生して残っている日数は、2年の時効内なら使えます。
相談できるところ
- 豊田労働基準監督署 監督課 豊田市常盤町3-25-2(〒471-0867)/電話 0565-35-2323/管轄は豊田市・みよし市/平日8:30〜17:15
- 愛知労働局 需給調整事業第二課(派遣会社の指導監督に関すること)電話 052-685-2555
- 愛知労働局 総合労働相談コーナー 電話 052-972-0266/平日9:30〜17:00/無料・予約不要
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省委託)電話 0120-811-610/平日17:00〜22:00、土日祝9:00〜21:00/無料
- あいち労働総合支援フロア 労働相談コーナー(愛知県)名古屋市中村区名駅4-4-38 愛知県産業労働センター17階/電話 052-589-1405/月〜金9:30〜18:00、土10:00〜17:00
- ハローワーク豊田 豊田市常盤町3-25-7(〒471-8609)/電話 0565-31-1400
労働条件や税金の個別の判断は、上記の窓口や、社会保険労務士・税理士に確認してください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
