この記事の要点
- 愛知県の最低賃金はいま1,140円。2026年10月1日から1,195円になる見込み
- 残業代・通勤手当・精皆勤手当・家族手当は最低賃金の計算に入らない
- 下回っていた分は差額を請求できる。賃金の請求権の時効は当分の間3年
2026年10月1日から、愛知県の最低賃金が上がります。時間額1,195円になる見込みです。いまの1,140円から55円の引き上げです。
最低賃金は、これを下回る時給で働かせてはいけない、という法律上の下限です。正社員もパートも派遣も、雇い方に関係なく適用されます。本人が「この時給でいい」と同意していても、下限を割る契約はその部分が無効になります。
ここでは、愛知県のいまの額と新しい額、そして自分の時給が下限を上回っているかの確かめ方を書きます。給与明細を手元に置いて読むと早いです。
愛知県の最低賃金は1,140円、10月から1,195円
愛知地方最低賃金審議会は、愛知県最低賃金を1,195円に引き上げるよう答申しました。いまの1,140円から55円の引き上げです。
ただし2026年8月20日の時点では、まだ答申の段階です。異議申出の受付を経て正式に決まります。異議の申出がなければ、2026年10月1日から発効する見通しです。確定した額は愛知労働局のサイトに載ります。
| 適用時期 | 時間額 |
|---|---|
| 2025年10月18日から | 1,140円 |
| 2026年10月1日から(予定) | 1,195円 |
1つ前の改定は2025年10月18日でした。このとき1,077円から1,140円になっています。今回の55円は、国が示した愛知県の目安54円を1円上回りました。
10月1日をまたぐ月の給与は、9月30日までと10月1日以降で下限が変わります。10月分の明細は特に確認してください。
最低賃金の計算に入らない手当があります
ここが一番よく間違えるところです。明細の総支給額を働いた時間で割っても、正しい答えは出ません。
最低賃金と比べるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。次の賃金は計算から外します。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外割増賃金、いわゆる残業代
- 休日割増賃金
- 深夜割増賃金のうち、通常の賃金を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
残業代や通勤手当を足して「時給1,200円になっている」と考えるのは誤りです。基本給と、上に挙げた以外の毎月の手当だけで比べます。
時給・日給・月給、それぞれの確かめ方
厚生労働省が示している比べ方は次のとおりです。
| 支払い方 | 計算 |
|---|---|
| 時間給 | 時間給 ≧ 最低賃金額 |
| 日給 | 日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額 |
| 月給 | 月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額 |
| 出来高払 | 期間の賃金総額 ÷ 期間の総労働時間 ≧ 最低賃金額 |
時給と月給を組み合わせて払われている場合は、それぞれを時間額に直して合計し、下限と比べます。
月給の人が使う「1か月平均所定労働時間」は、次の順で出します。
- 11日の所定労働時間を確認する(例:8時間)
- 2年間の所定労働日数を確認する(例:245日)
- 38時間 × 245日 = 1,960時間
- 41,960時間 ÷ 12か月 = 約163.3時間
この例で月給が20万円なら、20万円 ÷ 163.3時間 = 約1,224円です。1,195円を上回っています。年間の所定労働日数は会社ごとに違います。就業規則か年間カレンダーで、自分の会社の日数を確認してください。
派遣の人は「働いている場所」の最低賃金で見ます
派遣で働く場合、適用されるのは派遣先の事業場がある地域の最低賃金です。派遣会社の所在地は関係ありません。自分が住んでいる場所も関係ありません。
愛知県内の工場で働いているなら、愛知県の最低賃金で見ます。派遣会社が岐阜県や静岡県にあっても同じです。
工場で働く人は「特定最低賃金」も見てください
業種ごとに、地域別最低賃金とは別の下限が決まっていることがあります。これを特定(産業別)最低賃金といいます。愛知県には2つあります。
| 産業 | 時間額(2025年12月16日から) |
|---|---|
| 製鉄業、製鋼・製鋼圧延業、鋼材製造業 | 1,175円 |
| 輸送用機械器具製造業 | 1,146円 |
輸送用機械器具製造業には、自動車と自動車部品の製造が入ります。豊田市の周辺で働く人には関係の深い区分です。
地域別と特定の両方が当てはまるときは、高いほうが適用されます。2026年10月に地域別が1,195円になれば、上の2つを超えます。ただし特定最低賃金も別に見直されます。その時期に改めて確認してください。
下回っていたら、差額を請求できます
最低賃金法第4条第2項に定めがあります。下限に達しない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効になります。そして無効になった部分は、最低賃金と同じ定めをしたものとみなされます。
つまり下限との差額は、未払い賃金です。過去にさかのぼって支払いを求められます。賃金の請求権の時効は、労働基準法第115条で5年です。ただし附則第143条により、当分の間は3年とされています。
地域別最低賃金を下回った場合、使用者には50万円以下の罰金が定められています(最低賃金法第40条)。
進め方の順番はこうです。
- 1給与明細と労働条件通知書を集める(できれば1年分)
- 2タイムカードの写しやシフト表など、働いた時間がわかるものを残す
- 3上の計算式で時間額を出す
- 4労働基準監督署に相談する(明細を持参する)
会社に直接言いにくければ、先に監督署へ行って構いません。相談は無料です。
例外として下限が下がる場合があります
最低賃金法第7条には、下限を減額できる場合の定めがあります。障害により著しく労働能力が低い人、試の使用期間中の人、認定職業訓練を受けている人、軽易な業務に従事する人などです。
ただしこれは、使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときだけです。会社が勝手に決めることはできません。「試用期間だから最低賃金以下でいい」という説明は、許可がなければ通りません。減額できる率も、許可の中で決まります。
よくある質問
昇給がなく、10月から最低賃金と同じ時給になります。問題ですか。
最低賃金法の上では違反ではありません。下限以上であれば適法です。ただし、これまで下限より高かった時給が追いつかれた形です。会社に今後の賃金の考え方を説明してもらうことはできます。時給を下げる変更であれば、別に同意や手続きの問題になります。
会社が「10月に上がるのを知らなかった」と言っています。
最低賃金は、事業主が知らなくても適用されます。知らなかったことを理由に支払いを免れることはありません。差額の請求はできます。まず労働基準監督署に相談してください。
相談したことが会社に伝わりますか。
労働基準監督署への申告は、匿名でもできます。名前を出すかどうかは相談のときに伝えられます。心配な点は最初に話してください。相談自体は無料で、予約もいりません。
相談できるところ
- 豊田労働基準監督署 監督課 豊田市常盤町3-25-2(〒471-0867)/電話 0565-35-2323/管轄は豊田市・みよし市/平日8:30〜17:15
- 愛知労働局 労働基準部賃金課 名古屋市中区三の丸2-5-1/電話 052-972-0252
- 愛知労働局 総合労働相談コーナー 電話 052-972-0266/平日9:30〜17:00/無料・予約不要
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省委託)電話 0120-811-610/平日17:00〜22:00、土日祝9:00〜21:00/無料
- あいち労働総合支援フロア 労働相談コーナー(愛知県)名古屋市中村区名駅4-4-38 愛知県産業労働センター17階/電話 052-589-1405/月〜金9:30〜18:00、土10:00〜17:00
- 愛知県 西三河県民事務所 豊田加茂産業労働・山村振興グループ 豊田市元城町4-45(豊田加茂総合庁舎2階)/電話 0565-32-6119/平日9:00〜17:00
税金や社会保険の個別の判断は、税務署や年金事務所、税理士・社会保険労務士に確認してください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
