この記事の要点
- 会社に伝える理由は「一身上の都合」で足ります。詳しく説明する義務はありません。
- 面接では嘘をつかず、事実の中から次の仕事につながる部分を選んで話します。
- 離職票の離職理由に納得できないときは、資料を持ってハローワークに相談できます。
辞めると決めたあと、いちばん気が重いのが理由の説明です。全部言えば角が立ちます。嘘をつけば、後で自分が困ります。
退職理由には、実は2つあります。今の会社に伝える理由と、面接で話す理由です。目的が違うので、話す量も違ってよいのです。
この記事では会社への伝え方と面接での言い方を分け、最後に離職票への対処を書きます。数字と条文は2026年8月現在のものです。
会社に伝える理由は「一身上の都合」で足ります
期間の定めのない雇用で働く人は、いつでも退職を申し入れられます。民法第627条第1項がそう定めています。申し入れの日から2週間が過ぎると、雇用は終わります。
条文のどこにも、理由を説明しなければならないとは書かれていません。退職届に書く言葉は「一身上の都合により」で足ります。
ただし、就業規則で「1か月前までに申し出ること」と定める会社は多くあります。引き継ぎがある職場なら、その定めに沿うほうが揉めません。
引き止められたときは、3つだけ伝えます
理由を細かく説明すると、その理由を一つずつ潰す話し合いになります。伝える内容は3つに絞ります。
- 1退職の意思が固まっていること
- 2希望する最終出社日と退職日
- 3引き継ぎをどう進めるつもりか
理由を重ねて聞かれても、「一身上の都合です」で構いません。日付は書面で残し、退職届のコピーを1部持っておきます。
労働基準法第22条第1項により、退職した人が請求すれば、使用者は証明書を交付しなければなりません。使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由が対象です。請求しない事項を書き加えることはできません。
面接で話す理由は、事実の中から選びます
面接で嘘をつく必要はありません。起きた事実のうち、どこを話すかを選ぶだけです。
起きたことが10あるとして、「次の仕事につながる3」を話します。残りの7を話さないことは、嘘ではありません。
面接官が知りたいことは、たいてい1つです。「同じ理由でうちも辞めないか」です。ここに答えが返っていれば、話は通ります。
人間関係・給与・体調、それぞれの言い方
人間関係が理由のとき
「上司と合わなかった」は事実です。ただ、聞き手には何が起きたか確かめられません。代わりに、その状況で自分が何をしたかを話します。
- 「作業の割り振りが決まっておらず、自分から手順書を作りました。改善はしましたが、続けるには限界がありました」
- 「判断の基準が共有されず、一人で抱える時間が長くなりました。決めごとを共有する職場で働きたいです」
特定の人を悪く言う表現は避けます。事実であっても、聞き手には確かめる手段がないからです。
給与が理由のとき
給与を理由に挙げること自体は問題ありません。隠すほうが不自然です。言い方は「足りない」ではなく「上がり方が見えない」に寄せます。
- 「資格を取っても手当に反映される仕組みがなく、今後の上がり方が見えませんでした」
- 「残業が減った分だけ収入が下がる形でした。基本給の比率が高い職場を探しています」
希望額を聞かれたら、数字で答えます。曖昧にすると、後で条件が食い違います。
体調が理由のとき
体調は隠すと後で困ります。交替勤務では勤務形態と直結するからです。伝える順番は「今の状態」が先、「働ける条件」が後です。
- 「深夜帯が続くと睡眠が崩れ、通院が必要になりました。今は治療を終えています。日勤か二交替なら問題なく働けます」
- 「腰を痛めた経験があり、20kgを超える手作業の繰り返しは避けています。それ以外の制限はありません」
医師から制限を受けている場合は、その内容をそのまま伝えます。
そのまま使える言い換えの一覧
| そのまま言うと | 面接で使える言い方 |
|---|---|
| 上司と合わなかった | 判断の基準が共有されず、一人で抱える時間が長くなった |
| 給料が安い | 資格や経験が手当に反映される仕組みがなかった |
| 残業が多すぎた | 月◯時間の時間外が続き、生活と両立できなくなった |
| 体調を崩した | 深夜勤務が続くと睡眠が崩れる。日勤なら制限なく働ける |
悪口に聞こえる言葉を、自分が取った行動に置き換えます。それだけで受け取られ方が変わります。
「自己都合」と書かれても、そこで決まりではありません
離職票の交付を希望すると、会社はハローワークに離職証明書を出します。その⑦欄に、会社が主張する離職理由が書かれます。
同じ用紙の⑯欄は「離職者本人の判断」です。「事業主が○を付けた離職理由に異議 有り・無し」という選択があり、自分で○を付けて氏名を書きます。
厚生労働省の記載要領は、判定の手順をこう説明しています。会社と本人の双方の主張を把握し、それぞれを確認できる資料で事実確認をしたうえで、最終的に安定所が判定します。事業主または離職者の主張のみで判定するものではない、とも書かれています。
異議があるときは、資料を持ってハローワークに相談します。タイムカードの写し、給与明細、シフト表などが資料になります。
自己都合でも扱いが変わる場合
次のような場合は、ハローワークのいう「特定受給資格者」の範囲に入ります。
- 離職の直前6か月のうち、いずれか連続する3か月で、1か月45時間を超える時間外労働があった
- 同じ6か月のうち、いずれか1か月で100時間を超える時間外労働があった
- 同じ6か月のうち、いずれか連続する2か月以上の期間で、時間外労働が1か月あたり平均80時間を超えた
- 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が、支払期日までに支払われなかった
- 上司や同僚などから、故意の排斥、著しい冷遇、嫌がらせを受けた
- 事業主から直接または間接に、退職するよう勧奨された
体力の不足、心身の障害、疾病、負傷などで辞めた場合は、「特定理由離職者」の範囲に入ります。
| 項目 | 一般の自己都合 | 特定受給資格者・特定理由離職者 |
|---|---|---|
| 必要な被保険者期間 | 離職前2年間に通算12か月以上 | 離職前1年間に通算6か月以上 |
| 待期 | 7日 | 7日 |
| 給付制限 | 原則1か月 | なし |
給付制限は、2025年4月1日以降に離職した人は原則1か月です。それ以前の離職は原則2か月でした。退職日から遡って5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合は3か月になります。
もらえる日数はこう決まります
基本手当をもらえる日数を、所定給付日数といいます。一般の自己都合退職では、年齢に関係なく加入期間だけで決まります。10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日です。
特定受給資格者は、年齢によっても変わります。加入期間が1年未満のときは、どの年齢でも90日です。1年以上は次のとおりです。
| 被保険者であった期間 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
よくある質問
退職届に本当の理由を書く必要はありますか?
自分の意思で辞める場合は、「一身上の都合により」で足ります。民法第627条第1項は、いつでも解約を申し入れられると定めています。理由の説明を求める規定はありません。ただし、会社から辞めるよう勧められた場合は別です。書く前にハローワークに相談してください。
面接で前の会社の不満を言うと落ちますか?
不満そのものが問題になるわけではありません。問題になるのは、原因が全部相手側にある話し方です。同じことが自社でも起きる、と受け取られます。事実を述べたうえで、自分が試したことを1つ添えてください。
退職理由を後から変えても大丈夫ですか?
面接で話した理由と、履歴書や職務経歴書の記載が食い違うと、確認を求められます。どの部分を話すか選ぶのは自由です。ただし一度決めたら、書類と口頭でそろえてください。
相談できるところ
ハローワーク豊田(豊田公共職業安定所)豊田市常盤町3-25-7/0565-31-1400/午前8時30分から午後5時15分(土日祝・年末年始を除く)。自動音声です。雇用保険の受給手続は「11#」、仕事探しは「41#」、迷ったら「1#」。
豊田総合労働相談コーナー(豊田労働基準監督署内)豊田市常盤町3-25-2/0565-30-7108/午前9時30分から午後5時(土日祝・年末年始を除く)。無料、予約不要、秘密厳守です。
愛知県 労働相談(西三河県民事務所 豊田庁舎)豊田市元城町4-45 県豊田加茂総合庁舎2階/0565-32-6119/平日午前9時から午後5時。無料です。
労働条件相談ほっとライン(厚生労働省委託)0120-811-610/平日は午後5時から午後10時、土日祝は午前9時から午後9時。無料で、夜勤明けや休日にかけられます。
税金や社会保険料の個別の計算は、税務署や年金事務所に確認してください。争いになりそうなときは弁護士への相談を検討してください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
