この記事の要点
- 同じ人への派遣は6か月が上限。そのあいだに双方が見極める
- 直接雇用が正社員とは限らない。契約期間と賃金は始まる前に書面で確認する
- 雇われなかった理由は、本人が求めれば書面などで知らせてもらえる
「紹介予定派遣」という言葉を求人で見たことがあると思います。派遣で働き始めて、途中でその会社の社員になる仕組みです。
正社員になれる近道のように見えます。ただし、そう決まっているわけではありません。仕組みの中身を知っておくと、判断を誤らずにすみます。
この記事では制度と数字を整理します。内容は2026年8月現在のものです。
紹介予定派遣とはどういう仕組みか
労働者派遣法2条4号に定義があります。派遣会社が、派遣を始める前か始めた後に、あなたと派遣先に対して職業紹介を行う、または行う予定でする派遣のことです。
職業紹介とは、働く人と会社の間の雇用関係の成立をあっせんすることです。つまり、派遣期間が終わったあと、その会社に直接雇われる話をまとめる役目です。
これを行うには、派遣の許可に加えて、職業紹介事業の許可か届出が必要です。どの派遣会社でもできるわけではありません。厚生労働省の令和6年度の集計(速報値)では、紹介予定派遣を実施した事業所は2,322か所でした。派遣の実績があった事業所の7.0%です。
普通の派遣と違うところは3つです
通常の派遣では、派遣先は働く人を選ぶことを目的とした行為をしないよう努める義務があります(法26条6項)。紹介予定派遣は、この規定の対象から外れています。そのため次のことができます。
| できること | 中身 |
|---|---|
| 派遣が始まる前の面接・履歴書 | 派遣先が面接や試験、履歴書の受付を行える |
| 求人条件の明示 | 派遣が始まる前と派遣期間中に、直接雇用の条件を示す |
| 意思の確認と採用内定 | 派遣期間中に、求人と求職の意思を確認し、内定を出せる |
面接があると聞くと身構えます。ただ、これは相手を見る機会が自分にもあるということです。
派遣先が人を選ぶときは、業務の遂行能力の試験や資格の有無など、社会通念上、公正と認められる客観的な基準によることが必要とされています。年齢、性別、障害による差別は、直接採用の場合と同じく禁止されています。
派遣の期間は最長6か月です
派遣会社は、同じ人について6か月を超えて紹介予定派遣を行わないこととされています。派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針で定められています。
6か月は見極めの期間です。長く働けば有利になる仕組みではありません。
期間を短くすることもできます。あなた、派遣先、派遣会社の3者が合意すれば、途中で派遣を終えて直接雇用に切り替えられます。意思の確認や職業紹介の時期を早めることも、3者の合意でできます。
数字で見ると、どれくらいが直接雇用になるのか
厚生労働省の令和6年度の集計(速報値)です。
| 段階 | 人数 |
|---|---|
| 紹介予定派遣で派遣された人 | 25,535人 |
| そのうち職業紹介が行われた人 | 18,219人 |
| 職業紹介を経て直接雇用に結びついた人 | 13,881人 |
派遣された人のうち、直接雇用に結びついたのは約54%です。職業紹介まで進んだ人のうちでは、約76%です。
半分ほどは直接雇用に進みます。残りは進みません。どちらも起こることとして考えてください。
断れるのは会社だけではありません
見極めるのは派遣先だけではありません。派遣期間中に、求人と求職の意思を確認する場があります。あなたが「この会社では働かない」と答えることもできます。派遣会社は、意思しだいでは職業紹介が行われないことを、あらかじめ伝えることとされています。
派遣会社が紹介予定派遣の派遣労働者として人を雇い入れるときは、あらかじめその旨を明示しなければなりません(法32条1項)。すでに派遣労働者として雇っている人を新たに紹介予定派遣の対象にするときは、明示したうえで同意を得る必要があります(法32条2項)。知らないうちに対象にされることはありません。
実際に働いてから決められるのが、この仕組みの利点です。仕事の中身、人間関係、交替勤務の負担。求人票では分からないことが6か月あれば見えます。
始まる前に確かめておくこと
労働者派遣契約には、直接雇用になった場合に予定される労働条件を書くことになっています(法26条1項9号)。派遣会社に聞けば示してもらえます。次の点は先に確かめてください。
- 1直接雇用のときの労働契約の期間。無期か有期か、有期なら何か月か
- 2賃金の額。派遣で働いているときの時給と比べてどうか
- 3就業の場所と業務の内容。派遣期間中と変わるのか
- 4始業と終業の時刻、休憩、休日、所定外労働の有無
- 5健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の適用
試用期間についても決まりがあります。厚生労働省の業務取扱要領は、紹介予定派遣で雇い入れた人に試用期間を設けることは望ましくないとしています。派遣先向けの指針でも、試用期間を設けないようにすることとされています。
年次有給休暇と退職金の扱いも確認する価値があります。派遣で働いた期間を勤務期間に通算する場合は、その旨を労働者派遣契約に書くことになっています。通算されれば、年休の付与が早く来ます。
雇われなかったとき、理由を聞けます
派遣先が職業紹介を受けることを希望しなかった場合。または職業紹介を受けたうえで雇わなかった場合。
このとき、あなたが求めれば、派遣会社は派遣先にその理由を示すよう求めることとされています。派遣先は、書面かファクシミリ、電子メールなどで派遣会社に理由を明示します。派遣会社はその理由を、あなたに書面で明示します。あなたが希望すれば、ファクシミリや電子メールでも受け取れます。
理由が分かれば、次の応募に生かせます。求めなければ届きません。求めるのは正当な行為です。
よくある質問
紹介予定派遣なら直接雇用してもらえますか。
そうとは限りません。令和6年度は、派遣された25,535人のうち13,881人が直接雇用に結びついています。派遣先が職業紹介を希望しないこともあります。あなたが断ることもできます。6か月は見極めの期間であって、約束の期間ではありません。
派遣期間中の給料は、直接雇用になった後と同じですか。
同じとは限りません。派遣期間中の賃金は派遣会社が支払います。直接雇用になった後の賃金は派遣先が支払います。金額の決め方も別です。だから、直接雇用のときに予定される賃金額を、始まる前に確かめる必要があります。
3年ルールとの関係はどうなりますか。
紹介予定派遣も労働者派遣なので、期間制限の対象です。ただし同じ人への派遣は6か月が上限です。そのため、同じ課で3年という個人単位の期間制限に届くことはありません。派遣先の事業所単位の期限は別に進むので、抵触日は就業条件明示書で確かめてください。派遣が終わって直接雇用になれば、そこからは派遣ではなく派遣先の従業員になります。
相談できるところ
条件が説明と違うと感じたときや、仕組みが分からないとき、相談できる公的な窓口があります。相談は無料です。
- 愛知労働局 需給調整事業第二課(派遣事業と職業紹介事業の指導監督)電話 052-685-2555
- 豊田総合労働相談コーナー(豊田労働基準監督署内・豊田市常盤町3-25-2)電話 0565-30-7108。受付は平日9時30分から17時まで
- ハローワーク豊田(豊田市常盤町3-25-7)電話 0565-31-1400
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省委託・フリーダイヤル)0120-811-610。受付は月曜から金曜が17時から22時、土日祝が9時から21時
個別の契約についての判断は、事情によって結論が変わります。労働者派遣契約の内容が書かれた書面と就業条件明示書を持って、上の窓口で確認してください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
