この記事の要点
- 作業の進め方を発注者から直接指示されているなら、契約書に「請負」とあっても偽装請負の疑いがあります
- 判断は書類ではなく、指示・時間管理・配置の実態で行われます
- 心当たりがあれば愛知労働局需給調整事業第二課(052-685-2555)に相談できます
工場で働いていると、給料をくれる会社と、作業をする場所の会社が違うことがあります。その形は大きく分けて二つです。「派遣」と「請負」です。
名前は似ています。しかし守られ方は違います。分かれ目は一つです。発注者があなたに直接指示を出せるかどうか、です。
契約書に「請負」と書いてあっても、実際は発注者から作業の指示を受けている。これがいわゆる偽装請負です。判断は書類ではなく、毎日の実態で行われます。この記事は、その見分け方をまとめたものです。
派遣と請負は、指示を出す人がちがう
派遣は、派遣元の会社と雇用契約を結びます。そのうえで派遣先の指揮命令を受けて働きます。派遣先が直接指示を出すのは、法律が認めた形です。
請負は違います。請負会社が仕事そのものを引き受けます。働く人に指示を出すのは請負会社です。発注者は、請負会社に注文を出すだけです。
| くらべる点 | 派遣 | 請負 |
|---|---|---|
| 雇用契約の相手 | 派遣元 | 請負会社 |
| 毎日の作業指示 | 派遣先が出す | 請負会社が出す |
| 出退勤・残業の管理 | 派遣先が管理 | 請負会社が管理 |
| 誰をどこに配置するか | 派遣先が決める | 請負会社が決める |
| 受入れ期間の制限 | 原則3年 | 派遣法の制限なし |
| 事業の許可 | 派遣元に必要 | 原則いらない |
派遣の3年には二つの数え方があります。一つは派遣先の事業所ごとの3年です(派遣法40条の2)。この期間は、過半数労働組合などの意見を聴けば3年を限度に延長できます。もう一つは、延長された場合でも、同じ人を課などの組織単位で3年を超えて受け入れてはならない、という制限です(派遣法40条の3)。無期雇用の派遣労働者などは、事業所ごとの制限の対象外です。
判断されるのは契約書ではなく実態です
区分の基準は国の告示で決まっています。「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」、通称37号告示です。
告示は二つの柱を立てています。一つは、請負会社が自分の雇う労働者の労働力を自ら直接使っていること。もう一つは、請け負った仕事を自分の業務として独立して処理していることです。
前者には、作業の遂行方法の指示と評価、始業終業や残業の管理、服務規律と配置の決定が含まれます。後者には、資金を自ら調達すること、事業主としての責任を負うこと、自前の設備または自ら行う企画・専門的な技術で処理することが含まれます。
告示の3条は、形だけ整えても逃げられないと定めています。法の規定に違反することを免れるため故意に偽装したものは、派遣事業とみなされます。
自分で見抜く6つの質問
- 1今日の作業の順番や方法を決めているのは誰ですか。
- 2残業を頼んでくるのは、どの会社の人ですか。
- 3遅刻や早退の連絡は、どの会社にしていますか。
- 4どのラインに入るかを決めているのは誰ですか。
- 5作業服や現場のルールを指示しているのは誰ですか。
- 6困ったとき、自分の会社の責任者にすぐ連絡がつきますか。
1から5の答えが発注者なら、偽装請負の疑いがあります。6は、責任者が現場に常駐していなくても構いません。ただし連絡体制があらかじめ整い、請負会社が出退勤を含む労働時間の管理と作業の指示を自ら確実に行えることが必要です。
これは偽装請負ではありません
- 業務に関係のない日常的な会話
- 発注者が請負会社に対して行うクレームや、作業工程の見直しの要求
- 安全衛生上、緊急に対処する必要がある事項の指示
- 元請が労働安全衛生法29条にもとづいて行う指導や指示
- 玄関、食堂、化粧室などを発注者と共同で使うこと
- 責任者の判断で、打合せや朝礼に同席すること
- 特段の合理的な理由があり、双方の合意のうえであらかじめ請負契約で定めた作業服の指定
ただし、打合せの場で作業の順序や人の割り振りが細かく指示されるなら、話は別です。発注者から作業方針の変更が日常的に指示される場合も同じです。その場合は労働者派遣と判断されます。
偽装請負だと、働く人に何が起きるか
まず、派遣なら受けられる保護が届きません。受入れ期間の制限も、派遣元による雇用安定措置も、就業条件の明示もありません。
次に、責任の所在があいまいになります。労働時間の管理も、安全衛生の責任も、誰が負うのかがぼやけます。
一方で、法律は救済も用意しています。派遣法40条の6です。発注者が法の適用を免れる目的で請負などの名目で契約し、派遣契約に定めるべき事項を定めずに労働者派遣を受けていた場合。その時点の労働条件と同じ内容で、発注者があなたに労働契約を申し込んだものとみなされます。
ただし条件があります。発注者がそれに気づかず、気づかなかったことに過失がない場合は除かれます。この申込みは、その行為が終わった日から1年を経過する日までは撤回できません。その期間内にあなたが承諾する意思を示さなければ、申込みは効力を失います。
許可を受けずに労働者派遣事業を行った者には罰則があります。1年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金です(派遣法59条)。
誰から、いつ、何を指示されたか。日付つきでメモに残しておくと、相談したときに話が早く進みます。
心当たりがあるときの手順
- 1契約書、労働条件通知書、就業条件明示書を手元に集めます。
- 2誰から、いつ、どんな指示を受けたかを日付つきで記録します。
- 3給与明細と、シフト表やタイムカードの控えを保管します。
- 4相談窓口に電話します。名前を出さずに聞くこともできます。
- 5必要なら、労働局に申告します。
派遣で働く人は、法違反の事実を厚生労働大臣に申告できます。窓口は労働局です。申告したことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています(派遣法49条の3)。労働基準法にも同じ趣旨の規定があります(労基法104条)。
よくある質問
契約書に「請負」と書いてあれば請負ですか。
違います。判断は契約の名前ではなく実態で行われます。厚生労働省も、契約形式ではなく37号告示にもとづき実態に即して判断すると説明しています。書類が整っていても、発注者が作業を直接指示していれば偽装請負と判断されます。逆に、発注者が請負会社を通じて注文しているだけなら問題になりません。
発注者の社員と話をしてはいけないのですか。
そんなことはありません。業務に関係のない日常的な会話は指揮命令にあたりません。厚生労働省の疑義応答集にもそう書かれています。問題になるのは、作業の順序や方法、人の割り振りを発注者が直接指示する場合です。安全衛生上、緊急に対処する必要がある指示も、偽装請負にはあたりません。
相談したら仕事を失いませんか。
総合労働相談コーナーは秘密厳守で相談を受けています。申告した場合も、それを理由とする解雇や不利益な取扱いは法律で禁止されています。不安なら、まず名前を出さずに一般論として聞いてみてください。窓口で何がどう扱われるかを、先に確かめることもできます。
相談できるところ
- 愛知労働局 需給調整事業第二課 電話 052-685-2555。名古屋市中区、広小路庁舎2階。労働者派遣事業や職業紹介事業の制度と運営に関する相談窓口です。
- 豊田総合労働相談コーナー 電話 0565-30-7108。豊田市常盤町3-25-2、豊田労働基準監督署内。9時30分から17時(12時から13時を除く)。無料、予約不要、秘密厳守です。
- 豊田労働基準監督署 電話 0565-35-2323(監督)。豊田市とみよし市が管轄です。労働時間や賃金の相談はこちらです。
- 労働条件相談ほっとライン 電話 0120-811-610。平日17時から22時、土日祝は9時から21時。通話料無料。14か国語に対応しています。
個別の事案が違法かどうかの判断は、行政機関や裁判所でなければできません。この記事は判断の材料です。迷ったら、事実を窓口に伝えてください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
