この記事の要点
- 週20時間以上・学生でない・勤め先の厚生年金加入者が51人以上なら加入対象です
- 2026年10月に賃金要件(月8.8万円以上)がなくなる予定で、週20時間が分かれ目になります
- 愛知県なら天引きは月給のおよそ14.7%。代わりに傷病手当金と厚生年金がつきます
給与明細に「健康保険」「厚生年金」と書かれた行があります。この2つをまとめて社会保険と呼びます。天引きされる額は小さくありません。
その代わりに、受け取れるものも増えます。そして、入る・入らないは自分では選べません。働く時間と勤め先の規模で決まります。
2026年10月、この条件が1つ減ります。ここでは条件と金額を順番に確認します。金額は2026年8月時点の愛知県の料率で計算しています。
社会保険は健康保険と厚生年金の2つ
健康保険は、病院の窓口負担を3割にする保険です。それだけではありません。病気やけがで働けないときに傷病手当金が出ます。
厚生年金は、国民年金に上乗せされる年金です。65歳からの年金が増えます。障害が残ったときの障害厚生年金、亡くなったときの遺族厚生年金もつきます。
雇用保険は別の制度です。失業したときの給付は雇用保険から出ます。
加入するかどうかは、2つの入口で決まります
入口1:働く時間が正社員の4分の3以上
1週間の所定労働時間と、1か月の所定労働日数を見ます。どちらも同じ職場の正社員の4分の3以上なら、加入対象です。勤め先の人数は関係ありません。
所定労働時間とは、契約で決まっている時間のことです。残業時間は入りません。
入口2:4分の3未満で働く人の4つの条件
どちらかが4分の3未満の人は「短時間労働者」と呼ばれます。次の条件をすべて満たすと加入対象です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月8.8万円以上
- 勤め先の厚生年金の加入者が51人以上
- 学生ではないこと
2か月以内の期間を決めて雇われ、その期間を超えて働く見込みがない場合は、対象から外れます。
月8.8万円を数えるとき、残業手当・休日手当・深夜手当は入れません。賞与、通勤手当、家族手当、精皆勤手当も入れません。契約で決まっている賃金だけで見ます。
2026年10月に条件が1つ減り、人数の条件も下がっていきます
厚生労働省は、月8.8万円という賃金要件を2026年10月に撤廃する予定だと示しています。根拠は2025年に成立した年金制度改正法です。
撤廃の理由は最低賃金の上昇です。すべての都道府県で最低賃金が時給1,016円を超えました。この時給で週20時間働けば、月の賃金は自動的に8.8万円を超えます。条件を残す意味がなくなった、という説明です。
愛知県の最低賃金も上がります。現在は時給1,140円です。2026年8月5日に審議会が答申を出し、10月1日から1,195円になる予定です。
勤め先の人数の条件も、段階的に下がります。
| 時期 | 対象になる勤め先の規模 |
|---|---|
| 2026年8月現在 | 従業員51人以上 |
| 2027年10月から | 従業員36人以上 |
| 2029年10月から | 従業員21人以上 |
| 2032年10月から | 従業員11人以上 |
| 2035年10月から | 従業員10人以下も対象 |
ここでいう従業員数は、厚生年金の加入者数です。同じ法人のすべての事業所を合計して数えます。
2026年10月からは、週20時間以上働くかどうかが、ほぼすべての分かれ目になります。
天引きされる金額(愛知県・協会けんぽの場合)
保険料は「標準報酬月額」という区切りで決まります。実際の月収を、あらかじめ決められた等級にあてはめた額です。
愛知県の協会けんぽの2026年度の健康保険料率は9.93%です。2026年4月分からは子ども・子育て支援金0.23%が加わります。厚生年金は18.300%です。いずれも会社と半分ずつ負担します。
本人が負担する額は次のとおりです。40歳未満の場合の金額です。
| 標準報酬月額 | 健康保険+支援金 | 厚生年金 | 本人負担の合計 |
|---|---|---|---|
| 88,000円 | 4,470円 | 8,052円 | 12,522円 |
| 98,000円 | 4,978円 | 8,967円 | 13,945円 |
| 118,000円 | 5,994円 | 10,797円 | 16,791円 |
| 150,000円 | 7,620円 | 13,725円 | 21,345円 |
| 180,000円 | 9,144円 | 16,470円 | 25,614円 |
| 200,000円 | 10,160円 | 18,300円 | 28,460円 |
40歳から64歳の人は、介護保険料が加わります。料率は1.62%で、会社と折半します。標準報酬月額118,000円なら956円増えます。
雇用保険も引かれます。2026年度の一般の事業では、本人負担は賃金の1000分の5です。月12万円なら600円です。
減った手取りの代わりに、手に入るもの
天引きが増えるのは事実です。その分、次のものがつきます。
傷病手当金。病気やけがで働けず、連続して3日休んだあと、4日目以降も休んだ日に出ます。最初の3日には有給休暇や休日も含めて数えます。1日あたりの額は、支給が始まる日より前の12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2です。支給開始日から通算1年6か月まで受け取れます。国民健康保険にこの給付はありません。
出産手当金。出産の日以前42日から、出産の翌日以後56日までのうち、休んだ日について同じ考え方で支給されます。
障害厚生年金と遺族厚生年金。国民年金だけの場合より、対象と金額が広がります。
65歳からの年金の上乗せ。厚生年金に入った期間の分が、老齢厚生年金として加算されます。目安の式は「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数」です。標準報酬月額118,000円で10年入ると、年およそ7万7千円です。これが受け取り始めたあと、ずっと続きます。
損か得かは、いまの立場で変わります
いま国民年金と国民健康保険を自分で払っている人。多くの場合、負担は軽くなります。国民年金保険料は2026年度で月17,920円です。全額が自己負担です。
一方、標準報酬月額118,000円の厚生年金は、本人負担が月10,797円です。健康保険料も会社が半分持ちます。そのうえ将来の年金は増えます。
いま配偶者の扶養に入っている人。ここは新しく負担が生まれます。月12,000円から17,000円ほどが引かれます。手取りだけを見れば減ります。
ただし、傷病手当金と厚生年金は自分のものになります。離婚や配偶者の失職があっても残ります。
時間を減らして避けたい人。週20時間を下回れば、加入対象から外れます。ただし週20時間未満だと雇用保険にも入れません。失業したときの給付がなくなります。なお2028年10月から、雇用保険の条件は週10時間以上に下がります。
「106万円の壁」が消えても、「130万円の壁」は残ります
106万円の壁とは、月8.8万円を12倍したおおよその数字です。2026年10月にこの条件はなくなる予定です。壁そのものが消えます。
一方で、130万円の壁は残ります。家族の健康保険の扶養に入れるかどうかの線です。年収が130万円以上になると扶養から外れます。60歳以上の人と、一定の障害がある人は180万円です。19歳以上23歳未満の人は150万円です。ただし配偶者は年齢にかかわらず130万円のままです。
税金の線は別です。2026年分から、給与所得控除の最低額が74万円になりました。基礎控除も引き上げられ、合計所得132万円以下なら99万円です。給与収入が173万円までなら、所得税はかかりません。
よくある質問
残業代を入れると月8.8万円を超えます。加入対象ですか?
8.8万円を数えるとき、残業代は入れません。休日手当や深夜手当も入れません。契約で決まっている所定内賃金だけで判断します。なお2026年10月には、この条件自体がなくなる予定です。それ以降は週20時間以上かどうかで決まります。
学生でも加入することがありますか?
昼間の学校に通う学生は、原則として対象外です。ただし夜間部や定時制の人は対象になります。休学中の人も対象です。卒業見込証明書があり、卒業前に就職して卒業後も同じ職場で働く人も対象です。
条件を満たしているのに、会社が手続きをしてくれません。
社会保険の加入は、会社や本人が選べるものではありません。条件を満たせば法律上加入することになります。まず勤め先の担当者に確認してください。それでも進まないときは、豊田年金事務所に相談できます。
相談できるところ
豊田年金事務所(豊田市神明町3-33-2、電話0565-33-1123)。加入の手続きや年金記録の相談ができます。受付は平日の午前8時30分から午後5時15分までです。週の初めの開所日は午後7時まで、第2土曜日は午前9時30分から午後4時までです。
ねんきんダイヤル(0570-05-1165)。年金の請求や受け取りについての電話相談窓口です。受付は月曜が午後7時まで、火曜から金曜は午後5時15分までです。通話料がかかります。
愛知県 西三河県民事務所産業労働課 豊田庁舎(豊田市元城町4-45、労働相談専用ダイヤル0565-32-6119)。豊田市とみよし市が対象です。平日の午前9時から午後5時まで、無料で相談できます。
豊田労働基準監督署 総合労働相談コーナー(豊田市常盤町3-25-2、電話0565-30-7108)。労働条件や賃金そのものの相談は0565-35-2323です。
労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)。無料の電話相談です。平日は午後5時から午後10時まで、土日祝は午前9時から午後9時までです。ポルトガル語(0120-531-403)など13言語に対応しています。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
