この記事の要点
- 2026年10月に月8.8万円の条件がなくなる予定。残る基準は「週20時間」
- 130万円の壁は残るが、2026年4月から労働契約の内容で判定できるようになった
- 2026年分の所得税は、給与178万円まではかからない
- 住民税は別の線で動く。豊田市では2026年の給与116万円から
「年収の壁」と呼ばれているものは、ひとつではありません。性質の違う3つが同じ言葉で語られています。だから、人によって関係のある壁が違います。
しかも2026年は、3つとも動く年です。10月に社会保険の条件が変わる予定で、所得税の線は2026年分から上がります。去年の知識のままだと判断を間違えます。
ここでは3つを分けて書きます。数字は2026年8月時点のもので、愛知県で働く人を想定しています。
壁は3つある
| 何の壁か | 超えると何が起きるか | 2026年8月時点の線 |
|---|---|---|
| 自分の社会保険 | 自分で健康保険と厚生年金に入る | 週20時間・月8.8万円・従業員51人以上の会社 |
| 家族の扶養 | 家族の健康保険から外れる | 年130万円(19歳以上23歳未満は150万円、60歳以上と障害者は180万円) |
| 自分の税金 | 所得税・住民税がかかる | 所得税は178万円、住民税は市町村ごと |
自分がどれに当たるかは、家族の健康保険に入っているかどうかで変わります。入っていない人には、2つめの壁はありません。
2026年10月、「106万円」という言い方が終わる
いま、パートやアルバイトが自分で社会保険に入る条件は次のとおりです。週の所定労働時間20時間以上、所定内賃金が月8.8万円以上、2か月を超える雇用の見込み、学生でないこと。さらに、厚生年金の被保険者が常時51人以上の会社であることです。
この「月8.8万円以上」が、2026年10月に廃止される予定です。理由は最低賃金の上昇です。
愛知県の最低賃金1,140円で週20時間働くと、月の賃金は約9万8千円になります。10月からの1,195円なら約10万3千円です。週20時間を満たせば、賃金の条件も自動的に満たされます。106万円という数字は、もう意味を持ちません。
会社の規模の条件も、これから段階的に下がります。
| 時期 | 対象となる会社 |
|---|---|
| 現在 | 厚生年金の被保険者が常時51人以上 |
| 2027年10月 | 36人以上 |
| 2029年10月 | 21人以上 |
| 2032年10月 | 11人以上 |
厚生労働省は、この条件を10年かけて段階的に縮小し、撤廃するとしています。
130万円の壁は残る。ただし数え方が変わった
家族の健康保険の扶養に入るには、年間収入が130万円未満であることが必要です。60歳以上の人と障害者は180万円未満です。同居なら被保険者の年収の2分の1未満、別居なら仕送り額より少ないことも条件になります。
19歳以上23歳未満の人は、2025年10月1日以後の認定から150万円未満に変わりました。学生でなくても対象です。
2026年4月1日以後の認定からは、給与収入だけの人は、労働契約の内容で年間収入を判定できるようになりました。時給・労働時間・日数から見込み額を計算します。労働条件通知書などの添付が必要です。
この方法だと、契約に定めのない残業代は年間収入に含めません。忙しい月の残業で扶養を外れる、という心配は小さくなります。
所得税の線は、2026年分から178万円
2026年(令和8年)分から、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に上がりました。基礎控除も、合計所得金額489万円以下の人は104万円になります。
合わせて178万円です。給与だけで年178万円までなら、2026年分の所得税はかかりません。
家族の扶養に入れるかどうかの線も上がりました。
| 区分 | 給与収入の上限 |
|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者 | 136万円 |
| 特定親族特別控除(19歳以上23歳未満) | 197万円 |
| 配偶者特別控除の対象になる配偶者 | 207万円 |
| 勤労学生控除 | 163万円 |
住民税は別の線。豊田市は116万円
住民税は所得税と別の制度です。今回の改正で住民税の基礎控除は変わっていません。給与所得控除の74万円だけが住民税にも入り、2027年度(令和9年度)分から適用されます。
豊田市の基準はこうです。前年の合計所得金額が42万円以下(扶養家族のいない人)なら、均等割も所得割もかかりません。総所得金額等が45万円以下なら、所得割がかかりません。
2026年に受け取った給与は、2027年度の市県民税のもとになります。給与だけなら次のようになります。
| 2026年の給与収入 | 2027年度の市県民税 |
|---|---|
| 116万円以下 | かからない |
| 116万円超119万円以下 | 均等割(市民税3,000円+県民税1,500円)と森林環境税1,000円 |
| 119万円超 | 上記に所得割(市民税6%+県民税4%)が加わる |
この表は、豊田市の非課税の基準額(42万円・45万円)が変わらないものとして計算しています。住民税の基準は市町村ごとに違うので、豊田市以外の人は自分の市役所に確認してください。
週20時間を超えると、引かれるものと、増えるもの
引かれる額は決まっています。下は月収10万円、40歳未満、協会けんぽ愛知支部の場合です。
| 引かれるもの | 本人負担(月) |
|---|---|
| 健康保険+子ども・子育て支援金 | 4,978円 |
| 厚生年金 | 8,967円 |
| 雇用保険 | 500円 |
| 合計 | 14,445円 |
そのかわりに増えるものがあります。
- 厚生年金が、基礎年金の上に一生上乗せされます。標準報酬月額9万8千円で1年働けば、受け取る年金は年6,445円増えます。計算は98,000×5.481÷1,000×12か月です
- 病気やけがで4日以上休んだとき、傷病手当金が通算1年6か月、給与のおよそ3分の2の額で出ます
- 出産のとき、出産手当金が出産前42日・出産後56日の範囲で、給与のおよそ3分の2の額で出ます
- 雇用保険の失業給付や教育訓練給付が使えます
手取りは一時的に減ります。減るのは「いま」で、増えるのは「これから先」です。どちらを重く見るかで答えが変わります。
よくある質問
10月になると、自動的に社会保険に入るのですか
週の所定労働時間が20時間以上で、他の条件も満たしていれば、本人や会社の希望に関係なく加入します。逆に、週20時間に届かない人は、いくら稼いでも対象になりません。まず雇用契約書の「所定労働時間」の欄を見てください。
手取りを減らしたくありません。何時間まで働けばいいですか
週の所定労働時間を20時間未満にすれば、社会保険の対象から外れます。ただし家族の扶養に入っている人は、年130万円の線も別にあります。どちらの線が先に来るかは時給によって違います。時給×週の時間×52週で年額を出して比べてください。
130万円を少し超えたら、すぐ扶養から外れますか
労働契約の内容で判定した年間収入が130万円未満なら、扱いは変わりません。想定外の残業代で結果的に超えた場合でも、社会通念上妥当な範囲にとどまるなら扶養は外れないとされています。判断をするのは家族が加入する健康保険です。協会けんぽと健康保険組合では扱いが違うので、保険証に書かれた保険者に確認してください。
相談できるところ
- 豊田年金事務所(厚生年金・社会保険の加入)電話 0565-33-1123。豊田市神明町3-33-2
- 全国健康保険協会 愛知支部(協会けんぽの扶養・傷病手当金・出産手当金)電話 052-856-1490
- 豊田市役所 市民税課(市県民税がかかる年収)電話 0565-34-6617。豊田市西町3-60 南庁舎2階
- 豊田税務署(所得税・年末調整・確定申告)電話 0565-35-7777。豊田市栄町1-105-3 豊田合同庁舎
- 豊田労働基準監督署(労働時間・賃金)電話 0565-35-2323
- 愛知県 西三河県民事務所産業労働課 豊田庁舎(労働相談専用ダイヤル)電話 0565-32-6119。平日9時から17時
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
