この記事の要点
- 職場の熱中症対策は2025年6月1日から罰則つきの義務になりました
- 2025年の熱中症の死傷者1,803人のうち、製造業が365人で業種別の最多です
- 射出成形作業には3級の技能検定があり、実務経験があれば受けられます
樹脂成形は、外から見ると「機械の前に立っているだけ」に見えます。実際は違います。機械が動いている時間と、人が動く時間が交互に来る仕事です。
この記事では、成形機の前で何をしているのかを工程の順に書きます。そのうえで、この仕事で話題になりやすい暑さと、未経験から入れるかを扱います。
数字と制度は、2026年8月時点で確認できたものだけを載せました。
樹脂成形は、溶かした樹脂を金型に流して固める仕事
プラスチックは、熱と圧力を加えたり冷やしたりすると、決まった形になります。この性質を使って製品を作るのが樹脂成形です。
成形の方法はいくつもあります。最も一般的なのが射出成形です。溶かしたプラスチックを金型に注入して、製品を作ります。
工程は毎回この順で回ります。
- 1材料のペレット(米粒ほどの樹脂の粒)を機械に入れます
- 2シリンダ(樹脂を溶かす筒)の中で加熱して溶かします
- 3金型の中へ射出します
- 4圧力をかけたまま、冷やして固めます
- 5型を開いて、製品を取り出します
この1回転をサイクルと呼びます。同じサイクルが一日中繰り返されます。
成形機の前で、何をしているのか
サイクルが自動で回っている間、人がやることは3つあります。
1つ目は、製品を見ることです。成形の不良には決まった名前があります。
- ショート……樹脂が型のすみまで届かず、製品が欠けることです
- バリ……型の合わせ目から樹脂がはみ出し、薄い膜になることです
- ヒケ……冷えて縮み、表面がへこむことです
2つ目は、後の工程です。製品についたゲート(樹脂の通り道の跡)を切り、寸法を測り、数を数えて箱に入れます。
3つ目は、材料と記録です。ホッパー(機械の上にある材料の入れ物)を切らさないよう補充します。決められた時刻に、条件や数量を記録します。
待ち時間は、サボりではなく工程です
冷やして固める時間は、人が短くできません。ここを縮めると製品が変形します。だから待ち時間が生まれます。
この時間の使い方が、職場によって大きく違います。1人が複数の機械を受け持つ職場もあれば、待ち時間に検査や箱詰めを組み込む職場もあります。
見学や面接のときは、ここを聞いてください。「1人で何台みますか」「待ち時間には何をしますか」。この2つの答えで、一日の忙しさはだいたい分かります。
段取り替えが、一日で一番忙しい
作る製品を変えるときは段取り替えをします。金型を外して別の型を付け、材料を入れ替え、条件を出し直します。
材料を替えるときは、シリンダに残った前の樹脂を押し出します。これをパージと呼びます。押し出された樹脂は熱いままです。
段取り替えのときは、機械を止める決まりがあります。労働安全衛生規則第107条です。対象は、機械の掃除、給油、検査、修理、調整の作業です。作業する人に危険を及ぼすおそれがあるときは、運転を停止しなければなりません。
止めたあとも決まりがあります。起動装置に錠をかける、表示板を取り付けるなど、その作業をしている人以外が動かせないようにする措置が必要です。
暑さは、2025年から法律の話になりました
成形機は熱を出します。周りの気温は上がります。ここは覚悟のいる部分です。
2025年6月1日から、職場の熱中症対策が罰則つきの義務になりました。労働安全衛生規則第612条の2です。
対象は、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の場所での作業です。そのうち、継続して1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行われる見込みのものが該当します。
会社に義務づけられたのは、次の2つです。
- 具合が悪い人が出たとき、本人や周りの人が報告できる体制を決めて、作業者に知らせておくこと
- 作業からの離脱、体を冷やす方法、医師にみせる手順、緊急連絡網と搬送先を決めて、作業者に知らせておくこと
この義務を怠った場合、労働安全衛生法により、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。
暑さについては、ほかにも決まりがあります。暑熱で有害のおそれがある屋内作業場では、冷房、暖房、通風などの温湿度調節の措置が必要です。労働安全衛生規則第606条です。著しく暑熱な作業場では、作業場の外に休憩の設備を設けなければなりません。同規則第614条です。
実際の件数も出ています。2025年に熱中症で亡くなるか4日以上休んだ人は1,803人でした。統計を取り始めた2005年以降で最も多い数です。
| 業種 | 2025年の死傷者数 |
|---|---|
| 製造業 | 365人 |
| 建設業 | 292人 |
| 商業 | 237人 |
| 運送業 | 220人 |
| 警備業 | 199人 |
製造業が最多です。屋外の仕事だけの問題ではありません。7月と8月の2か月に、全体の約72%が集中しています。
やけどと、はさまれ
2025年(令和7年)に、仕事で亡くなるか、休業4日以上のけがをした人は、製造業で26,371人でした。事故の型で見ると、高温・低温の物との接触が1,094人です。はさまれ・巻き込まれは5,992人で最多でした。
溶けた樹脂、ノズル、金型は熱を持ちます。多量の高熱物体を取り扱う業務では、会社は保護衣や保護眼鏡などの適切な保護具を備えなければなりません。労働安全衛生規則第593条です。
音の問題もあります。厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン」は、射出成形機による押し出しや切断の作業場を別表第2に挙げています。原料を動力で混合する作業場も同じ表にあります。別表第2は、等価騒音レベルが85デシベル以上になる可能性が大きい作業場をまとめたものです。
未経験で入れるか。何を覚えるか
未経験の求人はあります。最初は製品の取り出し、外観の確認、箱詰めから始まることが多くなります。
会社は、雇い入れたときに安全衛生教育を行う義務があります。労働安全衛生規則第35条です。機械の危険性、保護具の使い方、作業手順、作業開始時の点検など8項目が決まっています。
経験を形にしたいときは、国家検定の技能検定があります。プラスチック成形という職種です。
| 作業 | 実施されている等級 |
|---|---|
| 射出成形作業 | 特級・1級・2級・3級 |
| 圧縮成形作業 | 特級・1級・2級 |
| インフレーション成形作業 | 特級・1級・2級 |
| ブロー成形作業 | 特級・1級・2級 |
| 真空成形作業 | 特級・1級・2級 |
3級があるのは射出成形作業だけです。3級は初級技能者のレベルとされ、実務の経験があれば受けられます。年数の定めはありません。2級は、実務経験だけで受ける場合2年です。
よくある質問
一日中立ちっぱなしですか。
機械の前に立つ時間は長くなります。ただし、待ち時間の使い方は職場ごとに違います。検査や箱詰めを座って行う職場もあります。求人票では分かりません。面接で「立ち作業と座り作業の割合」を聞くのが確実です。
夏はどれくらい暑いですか。
工場によります。ただし、WBGT28度以上または気温31度以上の場所での作業が対象です。継続して1時間以上の見込みなら、会社には熱中症対策の義務があります。見学のときは、スポットクーラーの有無、水分と塩分の置き場所、涼しい休憩場所を見てください。緊急時の連絡先が掲示されているかも確認できます。
交替勤務は避けられますか。
日勤のみの求人もあります。交替勤務の求人もあります。求人票の勤務時間の欄で確認してください。交替勤務に入る場合、深夜(22時から翌5時)は25%以上の割増賃金の対象です。健康診断も6か月以内ごとに1回になります。
相談できるところ
体調や安全のことは、会社の外にも相談先があります。
- 豊田労働基準監督署(豊田市常盤町3-25-2)。安全衛生や健康診断は安全衛生課 0565-30-7111。労働条件は監督課 0565-35-2323。労災は労災課 0565-30-7112。管轄は豊田市とみよし市です
- 愛知県 西三河県民事務所(豊田庁舎)労働相談専用ダイヤル 0565-32-6119。平日9時から17時です
- あいち労働総合支援フロア 労働相談コーナー 052-589-1405。平日9時30分から18時、土曜10時から17時です
- ハローワーク豊田(豊田公共職業安定所)(豊田市常盤町3-25-7)0565-31-1400。求人内容や職業訓練の相談ができます
- 愛知県職業能力開発協会 技能検定課 052-524-2034。技能検定の受検について確認できます
仕事中や通勤中の体調不良でも、労災保険の対象になる場合があります。判断に迷うときは上の労災課に聞いてください。個別の法律判断が必要なときは、労働基準監督署か弁護士・社会保険労務士に相談してください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
