この記事の要点
- 先に受けるのは特別教育と技能講習。JIS資格はその後で足す
- 愛知県の最低賃金は1,140円。2026年10月1日から1,195円になる
- 屋内で継続してアーク溶接をする職場では、煙の測定とマスクの検査が会社の義務
豊田市の周りには、溶接の求人がたくさん出ています。ただ「溶接」と書かれていても、中身はかなり違います。使う機械が変われば、要る資格も、体への負担も変わります。
この記事では、溶接の種類と資格の順番を先に整理します。そのうえで賃金の下限と、体を守る仕組みを書きます。2026年8月現在の制度と金額です。数字は法令と行政の資料で確認したものだけを載せます。
溶接は大きく三つに分かれます
アーク溶接
電気の火花(アーク)の熱で金属を溶かしてつなぐ方法です。棒状の溶接棒を使う被覆アーク溶接が代表です。アルゴンなどのガスで空気をさえぎるTIG溶接も仲間です。仕上がりの見た目が問われる仕事で使われます。
半自動溶接
溶接ワイヤが機械から自動で送り出されます。手はトーチを動かすことに集中できます。自動車部品や鉄骨など、数をこなす現場で多く使われます。求人票の「半自動」は、たいていこれです。
スポット溶接
金属を電極ではさみ、電気を流して一点ずつ接合します。車体の組み立てラインでよく見かけます。強いアーク光は出ません。後で書く溶接ヒュームの規制も、この作業には当てはまりません。
資格は「就くために要るもの」が先です
溶接の資格は二つの層に分かれます。一つは、その作業に就くために法律で求められるものです。もう一つは、腕前を証明して仕事の幅を広げるものです。順番を間違えると損をします。
アーク溶接機を使う溶接や溶断には、特別教育が必要です。学科と実技があり、受けさせるのは会社の義務です。可燃性ガスと酸素を使う作業は扱いが違います。こちらは技能講習を修了した人などでなければ就けない業務です。時間数や日程は、実施する機関に確認してください。
| 作業 | 必要な手続き | 根拠 |
|---|---|---|
| アーク溶接機を使う溶接・溶断 | アーク溶接等特別教育(学科と実技) | 労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条第3号 |
| 可燃性ガスと酸素を使う溶接・溶断・加熱 | ガス溶接技能講習の修了など | 労働安全衛生法第61条、労働安全衛生法施行令第20条第10号 |
腕を証明する側が、日本溶接協会の溶接技能者評価試験です。手溶接はJIS Z 3801、半自動はJIS Z 3841が基準です。求人票の「JIS資格」は、たいていこれを指します。
この資格は取って終わりではありません。適格性証明書の有効期間は1年です。期限の3か月前からサーベイランスという手続きをします。これを2回受けて登録から3年たつと、再評価試験になります。再評価は期限の8か月前から2か月前の間に受けます。
応募する前に、その現場がアークかガスかスポットかを聞いてください。必要な資格が変わります。
時給の下限は法律で決まっています
求人票の時給は事業所ごとに違います。ここでは、確実に分かる下限だけを書きます。
| 最低賃金の名前 | 時間額 | 発効日 |
|---|---|---|
| 愛知県最低賃金 | 1,140円 | 2025年10月18日 |
| 愛知県最低賃金(改定後) | 1,195円 | 2026年10月1日 |
| 輸送用機械器具製造業の特定最低賃金 | 1,146円 | 2025年12月16日 |
特定最低賃金は、その産業で働く人の別枠の下限です。二つがかかるときは、高いほうが適用されます。最低賃金法第6条の定めです。つまり2026年10月1日からは1,195円が下限になります。派遣で働く人には、派遣先の都道府県の額が適用されます。発効が近づいたら、愛知労働局のページで最新の額を確かめてください。
割増賃金も決まっています。時間外は25パーセント以上の割増です。1か月60時間を超えた分は50パーセント以上になります。午後10時から午前5時までの深夜は25パーセント以上です。ここまでが労働基準法第37条の定めです。休日労働の割増は、政令で35パーセント以上と決められています。
深夜と時間外が重なった日は、割増を足して考えます。深夜の時間帯に時間外労働をしたなら、25パーセントと25パーセントで50パーセント以上です。給与明細で分かれていないときは、内訳を会社に聞いてください。
体を守る仕組みは、法律で細かく決まっています
アーク溶接で出る煙は「溶接ヒューム」と呼ばれます。2021年4月1日から、特定化学物質の規制対象になりました。含まれる酸化マンガンに神経機能障害のおそれがあるためです。
屋内で継続してアーク溶接をする作業場には、濃度をはかる義務があります。作業者に機器をつけてはかる個人ばく露測定です。溶接の方法を新しく採り入れるときや変えるときにも、はかり直すことになっています。結果に応じて、会社は有効なマスクを選んで使わせます。顔に密着する面体のあるマスクを使わせるなら、1年以内ごとに1回フィットテストをします。すき間から漏れがないか確かめる検査です。
健康診断も別枠であります。金属アーク溶接等作業に常時従事する人は、雇い入れや配置替えのときと、その後6か月以内ごとに1回です。握力の測定や、パーキンソン症候群様症状の検査が入ります。これとは別に、じん肺健康診断も必要です。
アークの光にも定めがあります。強烈な光を出す場所は区画し、適当な保護具を備えることになっています。労働安全衛生規則第325条です。遮光面なしで他人のアークを見ないでください。
暑さの対策も2025年6月1日から義務になりました。暑さ指数(WBGT)28度以上、または気温31度以上が目安です。暑さ指数は気温と湿度と日射から出す指標です。連続1時間以上、または1日4時間を超える作業が対象です。具合の悪い人が報告できる体制をつくり、作業者に知らせるのが会社の義務です。言い出しにくいときに思い出してください。
長く続けるために使える権利
有給休暇は、6か月続けて働き、全労働日の8割以上出勤すると10日つきます。その後は1年ごとに増えます。労働基準法第39条です。日数は次のとおりです。
| 続けて働いた期間 | 付く日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
10日以上つく人には、会社に義務があります。付与された日から1年以内に、5日は時季を決めて取らせなければなりません。使わなかった有給は2年で時効になります。
立ち作業でも、途中で座れる機会があるなら、会社はいすを備えることになっています。労働安全衛生規則第615条です。
お金をかけずに技術を身につける道
愛知県立三河高等技術専門校に、メタルクラフト科があります。岡崎市美合町にあり、電話は0564-51-0775です。訓練期間は6か月、定員は30名です。入校時期は7月と1月で、2027年度から8月と2月に変わる予定です。
ここではガス溶接技能講習、アーク溶接特別教育、自由研削といし特別教育の修了を目指します。JIS溶接技能者評価試験の合格支援もあります。教科書代が約6,000円、作業着や保護具が約17,000円などの費用がかかります。授業料と日程は学校に確認してください。
雇用保険をもらえない人には、求職者支援制度があります。要件を満たすと、訓練中に月10万円の職業訓練受講手当が出ます。通所手当は月4万2,500円が上限です。家族と別居して寄宿する場合の寄宿手当は月1万700円です。本人の収入が月8万円以下、世帯の収入が月30万円以下、金融資産が300万円以下などの要件があります。詳しくはハローワークで確認してください。
よくある質問
未経験でも溶接の仕事に就けますか。
特別教育や技能講習は、実務経験がなくても受けられます。会社が入社後に受けさせる形もよくあります。応募のときに、教育を会社が用意するのか聞いてください。自分で先に取るなら、公共職業訓練という道もあります。
JIS溶接技能者の資格がないと働けませんか。
法律上、この資格がないと働けないという決まりはありません。必要なのは特別教育や技能講習のほうです。ただし品質が問われる現場では、資格を求められることがあります。手当がつくかは会社ごとに違います。
溶接ヒュームの測定やフィットテストがされていません。
屋内で継続してアーク溶接をする作業場なら、濃度をはかる義務があります。フィットテストは、面体のあるマスクを使わせる場合の義務です。まず社内の安全衛生担当者に確認してください。改善されないときは、労働基準監督署の安全衛生課に相談できます。
相談できるところ
相談はどれも無料です。
- 豊田労働基準監督署(豊田市常盤町3-25-2)。労働条件・賃金は0565-35-2323。安全衛生課は0565-30-7111。労災課は0565-30-7112
- 総合労働相談コーナー(豊田労働基準監督署内)。0565-30-7108
- 愛知労働局 労働基準部 賃金課。052-972-0257。最低賃金のことはここです
- ハローワーク豊田(豊田市常盤町3-25-7)。0565-31-1400
- 愛知県の労働相談(豊田加茂地域)。0565-32-6119。平日9時から17時
- あいち労働総合支援フロア労働相談コーナー。052-589-1405。平日9時30分から18時、土曜10時から17時
- 労働条件相談ほっとライン。0120-811-610。平日17時から22時、土日祝9時から21時
税金や社会保険の個別の判断は、税務署や年金事務所、社会保険労務士に確認してください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
