苦情はどっちに言えばいいのか。契約書に、申出先は2つ書いてある

派遣の契約書には、苦情を言う先を2つ書くことになっています。 派遣元に1つ、派遣先に1つ。どちらに言ってもいい。法律でそう決まっています。
派遣の契約書には、苦情を言う先を2つ書くことになっています。
派遣元に1つ、派遣先に1つ。どちらに言ってもいい。法律でそう決まっています。
なぜ2つあるのか
派遣は、雇っている会社と、指示を出す会社が別々です。
給与を払い、社会保険をかけ、有給を管理するのは派遣元。
朝の集合場所を決め、その日の作業を割り振り、残業を頼むのは派遣先。
この二重構造のせいで、何か困ったときに「これはどっちの話だ」と一瞬止まります。止まっているうちに、言うタイミングが過ぎていきます。
だから法律のほうで、先回りして決めてあります。派遣元にも派遣先にも、苦情を受け付ける担当者を必ず置くこと。そして、その両方の連絡先を、働く人に紙で渡すこと。
その紙は「就業条件明示書」
仕事が始まる前に渡される、契約書と一緒になっている紙です。「労働条件通知書 兼 就業条件明示書」という名前になっていることもあります。
そこには、仕事の内容、就業場所、始業と終業の時刻、休憩、時間外の有無、契約期間が並んでいて、その中に「苦情の申出先」という欄があります。
派遣元の部署名・担当者名・電話番号。
派遣先の部署名・担当者名・電話番号。
2つ並んでいるはずです。
ただ、書いてあることと、知っていることは別です。この欄を見た覚えがある、という人はそう多くありません。契約書は、もらった日にファイルに入れて、それきりになりがちです。
同じ紙で、もう一か所だけ見ておくと得なところがあります。時給の欄です。愛知県の最低賃金は1,140円で、2026年10月1日から1,195円になる予定です。10月以降の期間が入っている契約なら、そこを下回っていないかが見どころになります。
で、結局どっちに言えばいいのか
結論から言うと、どちらでもいい。
派遣法では、派遣先が苦情を受けたら、その内容を派遣元に伝え、両者が連携して、遅れずに適切に処理しなさい、と決められています。逆も同じです。片方に言えば、もう片方に渡る。そういう仕組みになっています。
そのうえで、実務としての目安を書いておきます。
【派遣元(派遣会社)に言うほうが早いもの】
- 給与の額、締め日、振込のずれ
- 残業代、深夜割増、休日手当の計算
- 有給が何日あるか、いつから使えるか
- 社会保険、雇用保険
- 通勤手当
- 契約の更新があるかどうか
【派遣先(働いている工場)に言うほうが早いもの】
- 機械の安全、保護具、危ないと感じる作業手順
- 聞いていた内容と違う作業をさせられている
- トイレ、休憩室、食堂が使えない
- 現場での人間関係やハラスメント
ただし後半のものも、派遣元に同じ内容を伝えておいたほうが動きます。派遣元は、派遣先に是正を求める立場にあります。現場にひとりで立ち向かう話ではありません。
始業前の15分に朝礼があって、これを班長に言うべきか営業に言うべきかで迷ったまま数か月が経つ。豊田やみよしの工場では、よく聞く止まり方です。朝礼のあと、ラインが動きだすまでの数分にその話が出て、二年目の人が、去年から同じことを思っていた、と言い出すこともあります。
「苦情」という言葉が重い
紙に書いてあるのは「苦情の申出先」です。文句を言う人の窓口、という響きがあります。
でも実際に伝える中身は、たいてい質問です。
この15分は労働時間ですか。この作業は契約書のどれに当たりますか。有給は今何日ありますか。この手袋で合っていますか。
聞いているだけです。それでいい。制度の名前が固いだけで、使い方まで固くする必要はありません。
申出先の欄が空いていたら
たまにあります。「担当営業まで」としか書いていない。派遣先の欄が空白になっている。
その場合は、派遣元の担当者に、派遣先側の苦情の申出先は誰かを聞けば済みます。派遣先には派遣先責任者が置かれていて、苦情の処理はその人の仕事のひとつです。誰かは必ず決まっています。
聞くこと自体が、少し話を前に進めます。
「言ったら次の更新がない」
この心配については、国が出している指針にはっきり書かれています。苦情を申し出たことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない。
契約を切る。更新しない。仕事を減らす。急に遠い部署へ移す。苦情を理由にこれをやるのは、してはいけないと決まっています。
ただ、決まっている、ということと、絶対に起きない、ということは別です。だから記録が要ります。
記録といっても、大げさなものは要りません。いつ、誰に、何を言ったか。返事は何だったか。スマホのメモに一行ずつ足していくだけで、あとから見返せるものになります。
電話で伝えたなら、そのあとにLINEかメールで「さきほどお電話した件です」と一行だけ送っておくと、日付が残ります。それだけで、あとから「言った・聞いていない」にならずに済みます。
言うときは、日付と事実と数字だけ
感情を足さないほうが、たいてい早く通ります。
「いつも朝礼がタダ働きでおかしい」ではなく、
「4月1日から、始業8時00分の前、7時45分に朝礼があります。この15分は労働時間として計算されていますか」
これでいい。相手を責めない。事実と、質問だけ。
数字にすると、話が動きやすくなります。時給1,300円の人で計算してみます。
1,300円 ÷ 60分 = 1分あたり約21.7円
21.7円 × 15分 = 1日あたり約325円
325円 × 月20日 = 月6,500円
6,500円 × 12か月 = 年78,000円
その15分を足して、その日の労働時間が8時間を超えるなら、超えた分に時間外の割増25%が付きます。
所定が8時間の職場なら、朝礼の15分がそのまま超えた分です。始業前か終業後かは関係ありません。
325円 × 1.25 = 1日約406円。月にして8,125円。
自分の時給でも同じ計算ができます。時給を60で割って、分数をかけるだけです。手取りの話は https://www.b-staff.jp/guide/haken-tedori にまとめてあります。
通りやすい順番
- 契約書の「苦情の申出先」の欄に、誰の名前と番号があるかを見ておく
- 日付、起きたこと、数字を、スマホのメモに一行ずつ残しておく
- 派遣元の担当者に、その一行をそのまま伝える
- 返事がいつ来るか、期日を聞いておく
- 中身が安全や人間関係なら、派遣先の申出先にも同じ内容を伝えておく
このうち、いちばん効くのは2番です。「先月くらいから」より「4月1日から」のほうが、話が具体的に進みます。
それでも動かないとき
労働条件相談ほっとライン(厚生労働省・無料)0120-811-610
平日17:00〜22:00、土日祝9:00〜21:00。2交替の人でも実際にかけられる時間帯です。
総合労働相談コーナー(愛知労働局・無料)052-972-0266
平日9:30〜17:00。匿名でも話を聞いてもらえます。
有限会社ブリッジスタッフサービス(豊田市・1978年創業)/0565-34-0707 平日10:00〜17:00、LINEは24時間受付です。
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今の職場で何か言いたいことができたとき、最初に顔が浮かぶのは、派遣会社の担当者ですか。それとも現場の人ですか。
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