この記事の要点
- 豊田市の2023年の製造品出荷額等は16兆8,144億円で全国1位。市内933工場の従業者の77.3%が自動車関連です
- 愛知県の最低賃金は1,140円。2026年10月1日から1,195円になる予定です
- 派遣は同じ組織単位で3年、有期契約は通算5年を超えると無期転換を申し込めます
- 残業代や深夜手当は、最低賃金の計算には入りません
豊田市で働いていると、「うちは二次です」という言い方をよく聞きます。この「一次」「二次」は、部品がどういう順番で流れてくるかを表す言葉です。
自分がその流れのどこにいるかが分かると、見え方が変わります。忙しさの波がなぜ来るのか。契約書の言葉が何を意味するのか。どちらも位置とつながっています。
この記事では、まず構造を説明します。そのうえで、賃金の下限と契約のルールを法令に沿って確認します。2026年8月現在の数字です。会社の良し悪しを判定する記事ではありません。
豊田市を、数字で見る
豊田市の2023年(令和5年)の製造品出荷額等は16兆8,144億円です。全国の市区町村で第1位です。
2023年経済構造実態調査の製造業事業所調査によると、市内には933の工場があります。その工場で働く人のうち、77.3%が自動車関連製造業に従事しています。
ここでいう自動車関連製造業とは、日本標準産業分類の細分類の項目名に「自動車」が含まれるものを集めた区分です。組立工場だけでなく、部品を作る工場も入ります。
トヨタ自動車の国内の生産拠点は11か所です。11か所すべてが愛知県内にあります。うち6か所が豊田市内、3か所が隣のみよし市にあります。
市内の工場で働く人の4人に3人以上が、自動車に関わる仕事をしています。
仕事は上から下へ流れます。これが「ティア」
完成車メーカーは、車を設計して組み立て、売る会社です。そこに直接納める会社を「一次」と呼びます。「ティア1」という言い方もします。ティアは段や層を意味する言葉です。
一次に納めるのが二次、二次に納めるのが三次です。実際には四次、五次まで続くこともあります。
層ができるのは、車1台に使う部品の種類が多いためです。完成車メーカーはすべてを自分では作らず、まとまった単位ごとに外の会社へ任せています。
| 層 | よく担当するもの | 納める相手 |
|---|---|---|
| 完成車メーカー | 車の設計、組立、販売 | 販売会社・使う人 |
| 一次 | シート、ブレーキ、電装品などのまとまり | 完成車メーカー |
| 二次 | そのまとまりを構成する個々の部品 | 一次 |
| 三次以降 | プレス、切削、めっき、熱処理などの加工 | 二次 |
自分がどの層にいるかは、3つで分かります
- 1請求書の宛先はどこか。 売上を誰から受け取っているかが、いちばん確かな手がかりです。
- 2図面は誰のものか。 客先から支給される図面か、自社で描いた図面かで、位置が変わります。
- 3生産の指示が何段階を経て届くか。 完成車メーカーの計画が、いくつの会社を通って自分の職場に来るかを数えます。
派遣で働いている人は、もう一つ分けて考えてください。雇用契約の相手(派遣元)と、指示を受ける職場(派遣先)は別の会社です。層の話は派遣先についての話です。
層の位置は、忙しさの波に効きます
完成車メーカーの生産計画は「内示」として上流から下りてきます。下の層ほど、情報が届くのが遅くなりがちです。
増産のときは残業が増えます。減産のときは、稼働日そのものが減ることがあります。層が下がるほど、この振れ幅は大きくなる傾向があります。
ただし、層だけで決まるものではありません。一次でも特定の車種に売上が偏っていれば、波は大きくなります。
賃金の下限は、法律で決まっています
最低賃金は、雇用形態や呼び方に関係なく、すべての労働者に適用されます。パート、アルバイト、臨時、嘱託も同じです。
愛知県には2種類の最低賃金があります。全産業に適用される「愛知県最低賃金」と、特定の産業だけに適用される「特定最低賃金」です。
| 最低賃金の名前 | 時間額 | 発効日 |
|---|---|---|
| 愛知県最低賃金 | 1,140円 | 2025年10月18日 |
| 愛知県最低賃金(改定後) | 1,195円 | 2026年10月1日 |
| 輸送用機械器具製造業 | 1,146円 | 2025年12月16日 |
| 製鉄業、製鋼・製鋼圧延業、鋼材製造業 | 1,175円 | 2025年12月16日 |
両方が同時に適用される場合は、高い方の金額以上を支払う必要があります。2026年10月1日以降は、愛知県最低賃金の1,195円が上の2つの特定最低賃金を上回ります。
特定最低賃金は改定される場合があります。最新の額は愛知労働局で確認できます。
派遣で働く人には、派遣先の事業場がある地域の最低賃金が適用されます(最低賃金法13条)。派遣元の会社がどこにあるかは関係ありません。特定最低賃金も、派遣先の事業と同種の事業に適用されているものが使われます(同法18条)。
特定最低賃金が適用されない人がいます
輸送用機械器具製造業の特定最低賃金は、次の人には適用されません。この場合は愛知県最低賃金が適用されます。
- 18歳未満または65歳以上の人
- 雇入れ後3か月未満で、技能を習得中の人
- 清掃、片付け、賄い、湯沸かしの業務に主として従事する人
- 手作業、手工具、小型手持動力機で行うバリ取り、穴あけ、検数、選別、塗装の業務に主として従事する人
最低賃金の計算に入らない賃金があります
自分の時給が最低賃金を上回っているかを確かめるとき、次の賃金は計算から除きます。
- 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 結婚手当など、臨時に支払われる賃金
- 時間外、休日、深夜の割増賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
残業代や深夜手当を足して最低賃金を超えていても、それでは足りません。基本の時間額そのもので比べます。
雇用形態は「誰と契約しているか」で決まります
| 呼び方 | 雇用契約の相手 | 契約期間 | 作業の指示を出す人 |
|---|---|---|---|
| 正社員 | 働いている会社 | 定めなし | 同じ会社 |
| 契約社員・期間従業員 | 働いている会社 | 定めあり | 同じ会社 |
| 派遣社員 | 派遣元 | 定めあり/定めなし | 派遣先 |
| 請負会社の社員 | 請負会社 | 会社による | 請負会社 |
請負と派遣は、指示を誰が出すかで区別されます。請負なのに、発注元の社員から直接作業指示が出ている状態は「偽装請負」と呼ばれます。
2024年4月から、労働条件を示すルールが変わりました。契約のときに、次のことが書面などで示されます(労働基準法施行規則5条)。
- 就業の場所と業務の内容。あわせて、その変更の範囲
- 有期契約を更新する場合の基準。通算契約期間や更新回数に上限があるときは、その上限
- 無期転換を申し込めるようになる契約では、その申込みができること
契約書を受け取ったら、この3点を先に読んでください。
派遣と有期には、期間のルールがあります
派遣は原則3年で区切られます
派遣先の同じ事業所が派遣を受け入れられる期間は、原則3年です(労働者派遣法40条の2)。派遣先が過半数労働組合などから意見を聴けば、3年を限度に延長できます。
同じ人が同じ「組織単位」で働ける期間も3年です(同法35条の3、40条の3)。組織単位とは、おおむね課やグループを指します。
派遣元と期間の定めのない雇用契約を結んでいる人(無期雇用派遣)は、この期間制限の対象外です。
派遣元には、雇用安定措置の定めがあります(同法30条)。同じ組織単位で1年以上働く見込みの人には努力義務、3年間働く見込みの人には義務です。措置の内容は、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用、教育訓練などです。
同じ事業所で1年以上働いている人には、派遣先はその事業所の正社員募集の内容を知らせる義務があります(同法40条の5)。
有期契約は通算5年を超えると無期に変えられます
同じ会社との有期労働契約が通算5年を超えた人は、無期労働契約への転換を申し込めます(労働契約法18条)。申し込みがあれば、会社は承諾したものとみなされます。
申し込むと、今の契約が終わった翌日から無期契約になります。労働条件は、別段の定めがない限り、契約期間以外は今と同じです。
契約と契約の間に6か月以上の空白があると、それより前の期間は通算されません。これを「クーリング」と呼びます。直前の契約が1年未満のときは、必要な空白期間はもっと短くなります。
よくある質問
「一次だから安定している」は本当ですか?
層と会社の安定は別のものです。一次でも特定の車種に売上が偏っていれば、その車種の減産で大きく揺れます。三次でも複数の産業に納めていれば、波は小さくなります。層ではなく、取引先が何社あるかを見てください。
派遣で3年働いたら、直接雇用になりますか?
自動的にはなりません。3年は、派遣先が受け入れられる期間の上限です。同じ組織単位で3年間働く見込みの人には、派遣元に雇用安定措置の義務があります(労働者派遣法30条2項)。その選択肢の一つが、派遣先への直接雇用の依頼です。ただし依頼であって、派遣先が応じるとは限りません。3年が近づいたら、派遣元にどの措置を取るか聞いてください。
無期転換を申し込むと、正社員になれますか?
なりません。無期転換で変わるのは、契約期間の定めがなくなることだけです。賃金や仕事の内容は、別段の定めがない限り今と同じです。正社員への登用は会社ごとの制度で、無期転換とは別のものです。
相談できるところ
- 豊田総合労働相談コーナー(豊田労働基準監督署内) 〒471-0867 豊田市常盤町3-25-2 電話 0565-30-7108 平日9時30分〜17時。雇止めや労働条件の引下げなど、労働問題全般の窓口です。
- 豊田労働基準監督署 電話 0565-35-2323(労働条件、解雇、賃金) 管轄は豊田市とみよし市です。
- 愛知労働局 労働基準部 賃金課 電話 052-972-0257 最低賃金の相談窓口です。
- ハローワーク豊田 〒471-8609 豊田市常盤町3-25-7 電話 0565-31-1400
- 豊田市 就労支援室 〒471-0026 豊田市若宮町1-57-1 T-FACE A館9階 電話 0565-31-1330 午前10時〜午後6時(火曜休館)
この記事は制度の説明です。個別の事情の判断は、上の窓口や社会保険労務士、税理士に確認してください。
この記事は2026-08-20時点の法令にもとづいています。制度は変わります。 個別の事情については、記事内に挙げた公的な相談窓口にお問い合わせください。
